毎年、多くの学生が進学のために親元を離れて一人暮らしを始めます。
未成年者が一人暮らしをする場合、アパートなどの賃貸借契約をするのにどのようなルールがあるのでしょうか。
今回は未成年者の賃貸借契約について、今後の法改正も含めて詳しく解説します。
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弊社へのお問い合わせはこちら賃貸契約の前に確認したい!法律上の「未成年者」の定義
民放3条では、満20歳未満の者を「未成年」と定義しています。
未成年者は「制限能力者」とされ、契約などの法律行為をするには法定代理人(親権者など)の同意が必要となります。
「制限能力者制度」とは、経験が乏しい人や、判断能力が十分でない人を詐欺や不利な契約などから守るための制度。
未成年者だけでなく、認知症の高齢者や、精神障害者も対象となります。
未成年者にとっての法定代理人とは、親権を有する者(多くは父母)か、親権者のいない者にとっては未成年後見人のことを指します。
当然ながら、アパートなどの契約にも親権者の同意が必要となります。
そのほか、ローンの契約やパスポートの申請、結婚などにも親権者の同意が必要です。
そして、未成年者が単独でした契約などの行為は、原則として本人・法定代理人のどちらも後から取り消すことができると定められています。
例えば、18歳で親の同意を取らずにアパートの契約をした場合、親権者は後から契約を取り消すことが可能になります。
ちなみに、法定代理人である父母の婚姻中は、父母が共同で同意していないと有効な同意とみなされません。
そのため、父には内緒で、母だけが同意していたという状況の場合は、取消しが可能となります。
両親が離婚している場合は、親権を持っている親のみの同意で足ります。
婚姻経験のある未成年は成年とみなされる
現行法では、法定代理人である親権者の同意があれば、男子は満18歳以上、女子は満16歳以上で婚姻(結婚)が認められています。
また、一度でも婚姻すれば成年に達したとみなされるため、契約などの法律行為が可能になります。
そのため、18歳で結婚し、1年後に離婚した19歳の人は、たとえ満20歳未満であっても契約などの法律行為ができるようになります。
民法改正による成人年齢の引き下げ
2018年、成人年齢を満20歳から18歳に引き下げることなど、民法の一部を改正する法律が成立しました。
この改正法は、2022年より施行され、成年・未成年の定義が一部変更されます。
これにより、単独で有効な契約をすることができる年齢は満20歳から満18歳に引き下げられます。
つまり、アパートなどの賃貸借契約も未成年者が一人で行うことができるようになります。
また、女性の婚姻可能な年齢が満16歳から満18歳に引き上げられ、婚姻が可能な年齢は男女共に満18歳以上に統一されます。
そのため、法改正後は「婚姻経験のある未成年者」という定義は消滅することになります。
(実際には2024年までは一部16~17歳の既婚女性が存在することになります。)
ちなみに、成人年齢は満18歳に引き下げられますが、喫煙や飲酒、馬券など公営競技券の購入、養子を取ることができる年齢などは引き続き満20歳の年齢要件が維持されることになりました。
既婚の未成年者の賃貸契約
現行法では、成人年齢は満20歳と定義されていますが、上で説明したように未成年者でも既婚者であれば成人と同等の能力を持っているとみなされるため、契約などの法律行為が可能です。
つまり、既婚者の18歳以上の男性または16歳以上の女性であれば、アパートなどの賃貸借契約を結ぶために親権者の同意は必要ありません。
また、18歳で結婚して19歳で離婚したというようなケースのように、過去に一度でも婚姻経験があれば、既婚者でなくても1人暮らし用のアパートの賃貸借契約を結ぶことも可能です。
なお、2022年の法改正により女性の婚姻可能年齢は18歳に引き上げられ、成人年齢は満18歳に引き下げられます。
つまり、「既婚の未成年者」という定義は無くなりますので、法改正以降は18歳以上であれば親権者の同意なく賃貸借契約を結ぶことができます。
親権者の同意があった場合の未成年の賃貸契約
未成年者は単独での法律行為が制限されていますので、契約のためには法定代理人(親権者など)の同意が必要となります。
賃貸借契約も同様で、未成年者が単独でアパートの契約を結ぶことはできません。
しかし、一人暮らしをする際に法律上の年齢制限はあるわけではありません。
そのため、親権者の同意を得ることができれば、未成年でもアパートを借りて一人暮らしをすることはできます。
実際、大学進学のために多くの未成年が親元を離れて一人暮らしをしています。
ただし、実際のアパートなどの賃貸借契約には、一定の入居審査があります。
収入を証明する書類などを提出し、家を借りる人が家賃を滞納せずに払っていけるかどうかを見られることになります。
つまり、法律上問題はなくても、大家さんや不動産会社の入居審査に通らなければ、賃貸借契約は結ぶことはできません。
多くの場合、未成年者が賃貸借契約を結ぶには親権者が連帯保証人となる必要があります。
契約時には、本人の身分証明書(学生証やマイナンバーカードなど)や印鑑などと合わせて、連帯保証人となる親権者の身分証明書、同意書、戸籍謄本などの親子関係を証明する書類、収入証明や印鑑証明の書類などを用意する必要があります。
契約者本人の未成年が社会人の場合は、本人の収入などを証明する書類を提出し、家賃を滞納せずに払っていけるのかを入居審査で見られることになります。
親権者が同意しない場合
未成年は、法定代理人である親権者が同意しない場合は契約などの法律行為ができません。
しかし、親権者の同意が簡単に得られないからと言って、同意を得ずにこっそりと賃貸借契約を結ぶということは大変危険です。
民法では、未成年者を保護するために「未成年者が親権者の同意を得ないで契約した場合、その契約は後で取り消すことができる」と定めています。
契約が取り消されてしまうと、契約時まで遡って無効ということになります。
例えば、所有しているアパートに1年間住んでいた18歳の学生が、親権者の同意をとっていなかったことが判明し、親権者が契約の取り消しを訴えたとします。
この場合、1年間の賃貸借契約は無効となってしまい、1年分の家賃の返還請求をされることになります。
この取り消しは、「未成年が詐術によって契約に至った場合」は例外となります。
未成年者が自らを成年であると偽ったり、親権者の同意があったように偽って賃貸借契約を結んだ場合、相手方の大家さんが騙されたということになってしまいます。
この場合は大家さん側を保護する必要があるため、遡って家賃を返還するなどの措置は取られません。
ただし、単に本人が自分は成年であると言ったとか、保護者の同意を得ていると言ったというだけでは「詐術」にはあたりませんので、取り消しはできなくなります。
契約の相手が成年であれば写真入りの身分証明書などで確認したり、未成年であれば親権者と未成年者の関係を証明する書類を用意してもらったり、親権者の同意を得ていることなどを対面・書面などでしっかりと確認する必要があります。
このため、未成年者が賃貸借契約を結ぶ場合は親権者を連帯保証人にすることが求められるケースが多くなります。
まとめ
いかがでしたか?
未成年者の賃貸借契約には、親権者の同意が必要であることがわかりました。
スムーズに入居審査をクリアするためには、親権者が連帯保証人となり、同意書に加え、親子関係を証明する書類や親権者の収入を証明する書類などが求められることが多くなります。
予め、契約のための必要書類などを揃えておくと良いでしょう。
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